あの頃の私へ 。お元気ですか? デビューして4年、引退して2年が経過した今、この手紙を書いています……【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第50回【最終回】
「私なんかが幸せになれない」
そんなことを二度と口にしないで欲しい、私からのお願いです。
私がそう思って諦めているうちは、何も手に入らないし、寄ってくるのは隙あれば貴方を貶めるか、首輪をつけようとしてくる人間ばかりで、貴方が求めているものがどんどん遠くなるばかり。貴方が自分から幸せになろうと行動しないと、貴方の抱える現実は何も変えることができません。少し怖いかもしれないけれど、一歩世界の外に踏み出してください。踏み出した先に貴方の欲しい世界が広がっています。
今の私はとても幸せです。
大事な人たちが私の周りで支えてくれていて、「助けて」といえば、すぐに駆けつけてくれるような人たちです。誰も貴方の過去を笑ったり気にしたりすることはありません。
あの頃より私は笑えています。ちゃんと等身大の私として、今の時間をしっかりと歩んでいます。
貴方がいたから今の私がいます。渡辺まおとして、生きてくれてありがとう。
私はいつまでも絶対の味方です。
私より
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読者の皆様、『私をほどく』を読んでいただきありがとうございます。
50回の節目、そして最終回を無事迎えることができました。
書くという行為を通じて、私が抱えている言葉にできない苦しみと向き合うことができればと思い『私をほどく』というタイトルをつけました。その願い通りの内容となったかと思います。
ここに書かれていることはすぐに役立つわけでも、万人の悩みに寄り添うものでもありません。しかしながらその種類や深さは違えど誰しもが傷を抱えて生きているこの世の中で、
真正面から傷と向き合う過程を言葉にして発信することによって、これを読んだ誰かが一歩踏み出すきっかけになれればと思い書き続けてきました。
一年前に想像していた未来とは全く違う場所に今私は立っています。
それが「私をほどいた結果」で、人生の一区切りを迎えたような清々しい気持ちで溢れています。
連載という形は終了となりますが、私が私と向き合う旅は一生続いていくでしょう。
改めて、『私をほどく』を読んでいただき本当にありがとうございました。
これからも神野藍をよろしくお願いいたします。
2024.05.24 神野藍
文:神野藍
※連載「私をほどく」は今回で最終回となります
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「元エリートAV女優のリアルを綴った
とても貴重な、心強い書き手の登場です!」
作家・鈴木涼美さんも絶賛した衝撃エッセイが誕生
✴︎目次✴︎
はじめに
#1 すべての始まり
#2 脱出
#3 初撮影
#4 女優としてのタイムリミット
#5 精子とアイスクリーム
#6 「ここから早く帰りたい」
#7 東京でのはじまり
#8 私の家族
#9 空虚な幸福
#10 「一生をかけて後悔させてやる」
#11 発作
#12 AV女優になった理由
#13 セックスを売り物にするということ
#14 20万でセックスさせてくれませんか
#15 AV女優の出口は何もない荒野だ
#16 後悔のない人生の作り方
#17 刻まれた傷たち
#18 出演契約書
#19 善意の皮を被った欲の怪物たち
#20 彼女の存在
#21 「かわいそう」のシンボル
#22 私が殺したものたち
#23 28錠1シート
#24 無為
#25 近寄る死の気配
#26 帰りたがっている場所
#27 私との約束
#28 読書について1
#29 読書について2
#30 孤独にならなかった
#31 人生の新陳代謝
#32 「私を忘れて、幸せになるな」
#33 戦闘宣言
#34 「自衛しろ」と言われても
#35 セックスドール
#36 言葉の代わりとなるもの
#37 雪とふるさと
#38 苦痛を換金する
#39 暗い森を歩く
#40 業
#41 四度目の誕生日
#42 私を私たらしめるもの
#43 ここじゃないどこかに行きたかった
#44 進むために止まる
#45 「好きだからしょうがなかったんだ」
#46 欲しいものの正体
#47 あの子は馬鹿だから
#48 言葉を前にして
#49 私をほどく
#50 あの頃の私へ
おわりに